第1節 世界経済危機後の変化(リーマン・ショック前から直近年まで):通商白書2014年版(METI/経済産業省) 您所在的位置:网站首页 1960年 出来事 経済 第1節 世界経済危機後の変化(リーマン・ショック前から直近年まで):通商白書2014年版(METI/経済産業省)

第1節 世界経済危機後の変化(リーマン・ショック前から直近年まで):通商白書2014年版(METI/経済産業省)

2023-08-15 14:49| 来源: 网络整理| 查看: 265

第1節 世界経済危機後の変化(リーマン・ショック前から直近年まで) 1.主要経済指標から見た世界経済の動向

 2008年9月に米国で発生したリーマン・ショックの後、世界規模で拡大した金融危機により、世界経済は近年で最も深刻な景気後退に陥った。その後、2009年を底に急速に回復へと向かったものの、リーマン・ショックの発生からわずか1年余りの2009年10月にギリシャ債務問題が顕在化し、その後、欧州債務危機へと発展していく中、世界経済は2011年には再び失速した(第Ⅰ-1-1-1図)。

第Ⅰ-1-1-1図 世界の実質GDP成長率、貿易量、失業率の推移(年率)

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 その後、欧州債務危機が長期化する中、世界全体の実質GDP成長率、貿易量は2011年以降、前年比で伸び率が低迷し、先進国の失業率も高止まりが続いた。新興国(特に中国)も、2011年には成長に陰りが生じた。2013年には米国経済が底堅く推移し、欧州も長期的な低迷から回復へと転ずる兆しが見られるなど、先進国が堅調さを示す一方、新興国については、2013年は全般的に景気減速が目立った。こうした状況から、2013年の世界経済は全体として緩やかな成長にとどまった。

(1)GDPの動向

 世界経済は、この5年間で、世界経済危機、欧州債務危機という2度に及ぶ深刻な危機に陥った。この間、先進国経済が大きく落ち込む一方、中国、ASEAN等をはじめとする新興国は高い経済成長を示し、リーマン・ショック後の世界経済の成長をけん引してきた。2011年以降、新興国の経済成長に陰りが見られたものの、IMFによれば1、先進国経済の回復を受けて、2014年には新興国も回復へと向かう見通しである(Ⅰ-1-1-2図)。経済成長の鈍化が指摘される中国は、年率7%台と相対的には高い水準を維持することが見込まれており、2015年には、中国、インド、ASEAN5の経済成長率が引き続き米国を上回るとともに、ブラジルもユーロ圏や日本を上回る伸びで経済が回復に向かうことが予想されている(第Ⅰ-1-1-3図2)。 

第Ⅰ-1-1-2図 先進国と新興国・途上国の経済成長見通し

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第Ⅰ-1-1-3図 主要国の経済成長見通し

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 こうした高い経済成長により、世界経済全体に占める新興国・途上国の経済規模も拡大している。2007年時点には世界のGDPの3割弱であった新興国・途上国は、2013年には4割弱を占めている(第Ⅰ-1-1-4図4)。2019年には更に高まることが見込まれており、引き続き、世界経済の回復と成長のけん引役として期待されている。

第Ⅰ-1-1-4図 世界のGDP構成比の比較(2007年、2013年、2019年)

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 世界経済全体に占める新興国・途上国の経済規模の内訳について、2019年までのIMFの見通しによれば5、中国は 、2019年には世界経済全体の14.7%を占め、新興国全体のシェア(41.4%)の3分の1を超える見込みである。ただし、拡大ペースについては、2007年から2013年まで(2010年を除く)は毎年1.0~1.2%の伸び幅であったが、2014年は0.7%となり、以後、2019年の0.1%まで、前年のシェアからの伸び幅が次第に縮小すると見られている(第Ⅰ-1-1-5図)。ロシアは、2013年をピークに、世界経済に占めるシェアの緩やかな縮小が見込まれ、ブラジルは、2014年以降、横ばいで推移する見込みである。一方、インドは2014年以降、また、ASEAN5は、2016年以降、シェアが緩やかに拡大する見込みであり、その他の新興国も2016年以降、緩やかな拡大が見込まれている。

第Ⅰ-1-1-5図 世界経済に占める新興国・途上国の規模の内訳(2007~2019年)

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 このように、新興国においては、中国が引き続き存在感を示しつつも拡大ペースが緩やかになる一方、インド、ASEAN5等の比重が次第に高まる見込みである。

1 IMF “WEO April 2014”

2 ユーロ圏は2014年1月のラトビアの加盟により18か国に拡大したが、同国の各種経済指標の値は極めて小さいため、データの継続性の観点から、便宜的に、2014年1月以降についても2013年12月までの17か国のデータを延長して用いることとする。

3 IMFは、2014年4月30日にロシアに関する4条協議の結果(Concluding Statement for the 2014 Article IV Consultation Mission)を公表。ロシアのGDP成長率についてWorld Economic Outlookの値を、2014年は1.3%から0.2%へ、2015年は2.3%から1.0%へと下方修正した。

4 EUは2013年7月のクロアチアの加盟により28か国に拡大したが、同国の各種経済指標の値は極めて小さいため、データの継続性の観点から、便宜的に、2013年7月以降についても2013年6月までの27か国(EU27)のデータを延長して用いることとする。

5 IMF “WEO April 2014”

(2)貿易動向

 世界全体の貿易量は、2008年の世界経済危機の影響により大幅に落ち込んだが2009年5月には底を打ち、2010年11月に世界経済危機の直前の最大値(2008年4月時点)まで回復した。その後、欧州債務危機などを背景として、世界の貿易量は緩やかな伸びにとどまっている(第Ⅰ-1-1-6図)。

第Ⅰ-1-1-6図 世界の貿易量の推移

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 先進国、新興国別に見ると、新興国は、輸出入ともに世界経済危機による落ち込みから順調に回復し、その後も高い伸びが続いている(第Ⅰ-1-1-7-①図)。一方、先進国は、世界経済危機及び欧州債務危機による影響の長期化を背景に、輸出入いずれもいまだに世界経済危機直前の最大値まで回復していない。輸出入別に見ると、まず輸入量について、先進国は、米国、ユーロ圏、日本のいずれも世界経済危機直前の最大値とほぼ同水準まで回復した後、おおむね横ばいで推移しているのに対し、新興国では、中東欧、アジア、ラテンアメリカのいずれも、世界経済危機前の水準を超え、その後も順調に伸びている(第Ⅰ-1-1-7-②図)。輸出量を見ると、先進国では、米国が世界経済危機前の水準を超えて堅調な回復を示している一方、ユーロ圏及び日本は伸び悩みが続いている(第Ⅰ-1-1-7-③図)。新興国では、いずれの地域においても世界経済危機前の水準を超える伸びが見られ、特にアジアの伸びが著しい。

第Ⅰ-1-1-7図 主要国・地域の貿易量の推移(指数、3ヶ月移動平均)

Excel形式のファイル(①先進国・新興国)はこちら Excel形式のファイル(②輸入量)はこちら Excel形式のファイル(③輸出量)はこちら

第Ⅰ-1-1-8図 主要国・地域の輸出額の推移

Excel形式のファイルはこちら (3)労働市場の動向

 先進国における失業率は全体として緩やかな低下傾向にあるが、ドイツ、日本を除き、依然として世界経済危機前の水準を上回っている。特に、フランスは失業率が悪化しており、ギリシャ、スペインの失業率は20%台後半と極めて高い。一方、主要新興国の失業率は全体として低下傾向にある(第Ⅰ-1-1-9図)。

第Ⅰ-1-1-9図 主要国の失業率の推移

Excel形式のファイル(①主要先進国)はこちら Excel形式のファイル(②南欧、中東欧)はこちら Excel形式のファイル(③主要新興国)はこちら

 なお、国際労働機関(ILO)によれば6、2013年の世界の失業者数は2億180万人と、初めて2億人台に達し、このうち7,450万人を15-24才の若年層が占めた。第Ⅰ-1-1-10図が示すように、2013年の若年層の失業率は13.1%となり、世界経済危機発生前の2007年(11.6%)以降、悪化が続いている。また、全年齢での失業率との格差もこの5年間で最大となるなど、若年層の就職難が際出っており、ILOは2014年には若年層の失業率は13.2%と更に悪化すると予想している。地域別に見ると、ラテンアメリカ・カリブ諸国を除く全ての地域で、若年失業率が前年比で悪化した。ILOは「弱く不均衡な経済回復により、若者は特に影響を受け続けている」と指摘している。

第Ⅰ-1-1-10図 主要地域における若年失業率の推移

Excel形式のファイル(①全年齢と若年層の失業率の比較(2007-2013年))はこちら Excel形式のファイル(②主要地域における若年失業率(2007-2013年))はこちら

6 ILO “Global Employment Trends 2014” 21 January, 2014

(4)生産動向

 鉱工業生産指数を見ると、先進国は、世界経済危機を経て2010年12月以降、横ばいのまま長期的に伸び悩んでおり、2014年2月時点でも世界経済危機直前の最高値(2008年4月)を下回っている(第Ⅰ-1-1-11図)。国別に見ると、米国は、2013年11月に、世界経済危機前のピークであった2007年12月の水準まで回復した。ユーロ圏は欧州債務危機の深刻化によって世界経済危機からの回復が腰折れし、低迷が続いている。日本はリーマン・ショック、東日本大震災の2度にわたって大きく落ち込み、2012年後半以降も欧州債務危機の深刻化等の影響により、低下が続いた。2013年に入って順調な回復をたどっているが、2014年2月時点でも世界経済危機前のピークであった2008年2月の水準をいまだに大きく下回っている。一方、新興国では全体として、2009年秋には、世界経済危機前のピークであった2008年2月の水準まで回復し、その後も順調に上昇している。地域別に見ると、アジア新興国の著しい上昇が新興国全体をけん引したのに対し、中東欧、ラテンアメリカは伸び悩み、中東アフリカは2012年半ば以降、低下傾向が続いた。

第Ⅰ-1-1-11図 主要国の鉱工業生産指数の推移

Excel形式のファイル(①先進国・新興国)はこちら Excel形式のファイル(②主要先進国・地域)はこちら Excel形式のファイル(③主要新興国・地域)はこちら (5)消費動向

 主要国における家計の最終消費支出の伸び率(年率)を見ると、世界経済危機及び欧州債務危機の際に大きく落ち込み、その後伸び幅は回復傾向にあるが、ユーロ圏においては伸び率が低下している(第Ⅰ-1-1-12図)。

第Ⅰ-1-1-12図 主要国における家計の最終消費支出の伸び率(年率)

Excel形式のファイル(①主要先進国)はこちら Excel形式のファイル(②ユーロ圏)はこちら Excel形式のファイル(③主要新興国)はこちら Excel形式のファイル(④ASEAN)はこちら

 また、家計消費を反映した小売の動向を自動車販売台数から見ると、世界経済危機前の2007年までは、米国の新車販売台数が突出して多かったが、世界経済危機の影響により大きく減少した(第Ⅰ-1-1-13図)。2010年以降は、米国の新車販売台数は増加を続け、2013年には世界経済危機前の2007年の水準に迫るまで回復した。他方、中国の新車販売台数が急速に伸び、2009年には米国を抜いて世界最大となった。その後も、中国の新車販売台数は順調に拡大し、2013年には世界で初めて2000万台を突破した。ブラジル、インド、ロシアといった主要新興国では、世界経済危機後、新車販売台数が順調に増加したが、2013年にはその伸びが抑制され、あるいは縮小した。日本では、2012年に大幅に増加したが、2013年は横ばいにとどまった。韓国も横ばいでの推移が続いている。ドイツ、フランスは欧州債務危機の深刻化により2012年以降減少している。

第Ⅰ-1-1-13図 主要国における新車販売台数の推移

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 こうした各国の動向を反映して、先進国の新車販売は、新興国に比べて緩やかな回復にとどまっており、世界経済危機前の2007年の水準まで回復していない。一方、新興国では、中国における拡大がけん引役となり、2011年、新車販売台数が先進国と逆転した。その後も先進国の伸びを上回って順調に伸びている (第Ⅰ-1-1-14図)。

第Ⅰ-1-1-14図 先進国及び新興国における新車販売台数の推移

Excel形式のファイルはこちら 2.世界経済危機前後の資本フローの動向 (1)米国における資本フローの動向

 世界経済危機は、金融市場にとどまらない大きなショックであり、国際的な資本フローに一定の影響を与えたと考えられる。ここでは、その前後の米国を中心とする資本フローにどのような変化があったかにつき、対米投資、米国による対外投資の順にみていく。

 海外からのネット7での対米投資額は、2006年の2兆652億ドルをピークに、リーマン・ショック発生後の2009年には3,151億ドルへと大幅に減少し、2013年は9,061億ドルと、依然としてピーク時の半分以下にとどまっている(第Ⅰ-1-1-15図)。

第Ⅰ-1-1-15図 米国の投資収支の推移(年次)

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 海外の公的部門からの対米投資は、2013年第2四半期の66億ドルの流出超を除き、流入超の状態が続いている。一方、海外の民間部門からの投資は、政治・経済情勢等を背景とする市場のリスクオン、リスクオフ傾向を反映して大きく変動した。特に、2008年から2009年前半は、世界経済危機の影響により、また、2012年前半は欧州債務危機の深刻化8により、海外民間部門が米国から資本を引き揚げた様子がうかがえる(第Ⅰ-1-1-16図)。

第Ⅰ-1-1-16図 海外による対米投資(米国の対内投資)の推移

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7資本取引において、「非居住者による自国資産の買いから売りを引いたもの」及び「居住者による海外資産の買いから売りを引いたもの」を各々「ネット」として本章では扱う。

8 ギリシャのユーロ圏離脱懸念、スペインの銀行不安、独仏の協調体制維持への懸念等。

 海外公的部門による対米投資の対象を見ると、米国財務省証券(いわゆる米国債)を含む米国政府証券向けが大半を占めている。(第Ⅰ-1-1-17図)。一方、海外民間部門による対米投資の対象については、証券投資及び米金融機関へのその他投資が多く、2008年から2009年前半及び2012年第2四半期は、金融機関へのその他投資を中心に米国からの資本流出超が続くなど、社会・経済情勢を反映した変動が見られる(第Ⅰ-​1-1-18図)。

第Ⅰ-1-1-17図 海外公的部門による対米投資の内訳

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第Ⅰ-1-1-18図 海外民間部門による対米投資の内訳

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 次に、米国による対外投資については、民間部門による投資が中心となっている(第Ⅰ-1-1-19図)。内訳を見ると、直接投資は安定的に流出超で推移している。一方、2008年後半及び2012年前半にかけては世界経済危機の影響により、米金融機関によるその他投資を中心に、引揚げ(米国への流入超)が見られる(第Ⅰ-​1-1-20図)。

第Ⅰ-1-1-19図 米国による対外投資の推移

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第Ⅰ-1-1-20図 米民間部門による対外投資の内訳

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 続いて対米投資の内訳を地域別に見ると、世界経済危機前の2007年は、欧州が9,567億ドルと流入額の46.3%を占めている(第Ⅰ-1-1-21図、第Ⅰ-1-1-22表)。2008-2009年の世界経済危機に際しては、欧州は、資本流出超の地域全体の7~8割を占め、また、欧州債務危機が深刻化した2012年には、米国への資本流入超の地域全体の14.2%までシェアを低下させたが、2013年には、その規模は5割を超え、再び米国のファイナンスにおいて大きな位置を占めている。また、日本と中国を含めたアジア太平洋地域は、欧州に次ぐ米国への「資本の出し手」となっており、米国への資本流入に占める割合は、2007年の21%から、2013年の35.8%と伸びている。特に、世界経済危機の際には、欧州の資本引揚げによる米国からの資本流出分を、日本と中国を含めたアジア太平洋地域からの投資が補完した。日本と中国を除いた場合も、アジア太平洋地域からの投資が米国への資本流入地域全体に占めるシェアは、2007年の5.5%から2009年は31.6%、2012年には24.5%となっている。

第Ⅰ-1-1-21図 海外による対米投資:投資元の地域の内訳(実額、年次)

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第Ⅰ-1-1-22表 海外による対米投資に占める投資元の地域別シェア(%、年次)

 対米投資元を国別に見ると、英国、中国等のプレゼンスが高い。特に中国は、2008年、2009年の世界経済危機に際しては、米国からの資本流出とほぼ同等規模の対米投資を行っている(第Ⅰ-1-1-23図)。

第Ⅰ-1-1-23図 海外による対米投資:投資元の国の内訳(実額、年次)

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 続いて、米国の対外投資先を地域別に見ると、世界経済危機が発生する前の2007年は、米国の資本流出額の66.4%を欧州が占めていたが、世界経済危機の際には、米国は欧州から投資を引き揚げている。一方、2010年以降は、同投資は再び流出超となり、2013年は資本流出の55.8%までシェアが戻っている。また、米国の資本流出に占めるアジア太平洋地域の割合が高まっている。日本と中国を除くアジア太平洋への投資が米国の資本流出地域全体に占める割合は、2007年の5.6%から、2009年に37.9%まで上昇した後、2010年以降は15%前後で推移している。さらに、日本と中国を加えたアジア太平洋向けの投資は、2010年以降、30%程度を占めている(第Ⅰ-1-1-24図、第Ⅰ-1-1-25表)。

第Ⅰ-1-1-24図 米国の対外投資:投資先の地域の内訳(実額、年次)

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第Ⅰ-1-1-25表 米国の対外投資に占める地域別シェア(%、年次)

 以上のように、世界経済危機、欧州債務危機を経て、アジア太平洋地域は、米国への「資本の出し手」として、また、米国の投資先として、位置付けが高まっている。 

(2)新興国への民間資本フローの動向 

 2000年代に入り、中国を始めとする新興国は、輸出主導で経済規模を拡大させた。2008年のリーマン・ショック以前には、直接投資を中心として新興国に資本が流入し、これが新興国の競争力を高めた(第Ⅰ-1-1-26図)。

第Ⅰ-1-1-26図 民間資本フロー(ネット)の動向及び内訳(新興国・途上国)

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 一方、2008年のリーマン・ショック時には、証券投資、その他投資がネットで流出し、民間資本全体のネットでの流入が大幅に減少した。先進国が危機対応のための金融緩和を実施した2009年以降は、新興国の高い経済成長が海外の資本を引き付け、新興国・途上国への証券投資が回復した。2011年には欧州債務危機が深刻化し、中国を始め新興国は外需低迷による景気減速に見舞われた。経済の先行きに対する懸念を背景に、2008年以降続いていた預金等の「その他投資」のネットでの流出が拡大し、民間資本全体のネットでの流入が再び減少した。こうして、2011年後半から2012年にかけて新興国へのネットでの資本流入は減少した。

 2013年に入ると、5月以降、米国において量的金融緩和の縮小開始観測が強まった。市場では流動性窮迫への懸念が高まり、新興国は大量の資本流出に見舞われた。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)が、量的金融緩和の縮小は経済情勢次第であり、かつ、緩和的な状態は長期的に続くという趣旨のメッセージを発したことから、投資家のリスク回避姿勢が和らいだ(詳細は第1章第2節「米国の量的金融緩和縮小とその影響」参照)。加えて、2013年は、欧州における金融緩和の進展、米国における「財政の崖」回避及び良好な景気指標の持続等を背景に、先進国経済の回復傾向が強まった。こうした要因も加わって、金融市場は次第に落ち着きを取り戻した。新興国・途上国においてはその他投資のネットでの流出が縮小し、2013年は民間資本全体のネットでの流入が拡大した。

 次に、新興国・途上国への民間資本のフロー(ネット)の内訳を地域別に見ていく。

 まず、アジア新興国においては、リーマン・ショック以降、民間資本全体のネットでの流入が増加している(第Ⅰ-1-1-27図)。その内訳を見ると、直接投資がリーマン・ショック後大きく増加し、対GDP比も2%前後で安定的に推移している。証券投資の流入も増加傾向にある。一方、2008年以降その他投資のネットでの増減が民間資本全体の増減に大きく寄与している。

第Ⅰ-1-1-27図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:アジア新興国

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 欧州新興国においては、2008年のリーマン・ショックを境に、民間資本全体のネットの流入が大きく減少した(第Ⅰ-1-1-28図)。すなわち、2008年までは、巨額のその他投資が流入したが9、これが2008-2009年を境に急激に引き揚げられた。その後、証券投資の流入が増加傾向にあったが、2013年ネットの流入額が減少している。民間資本全体のネットでの流入は、いまだに2007年時点の水準を大幅に下回っている。CISにおいては、2007年までは対GDP比で見ても高い水準の資本が流入超であったが、2008年にその他投資が急激に引き揚げられ、その後もネットでの流出超が続いている(第Ⅰ-1-1-29図)。

第Ⅰ-1-1-28図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:欧州新興国

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第Ⅰ-1-1-29図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:CIS

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 ラテンアメリカ・カリブ諸国においても、リーマン・ショック後は、その他投資の流出超の状態が続いている。一方で、証券投資のネットでの流入は増加傾向で推移している(第Ⅰ-1-1-30図)。また、2007年以降、ネットでの直接投資の流入が増加傾向にある。中東・北アフリカ諸国、サブサハラ・アフリカ諸国ともに、2007年以降直接投資は安定した動きを見せているものの、中東・アフリカ諸国においてはその他投資が、サブサハラ・アフリカ諸国においては、その他投資及び証券投資が流出超となっている。(第Ⅰ-1-1-31図、第Ⅰ-1-1-32図)。特に、サブサハラ・アフリカは2010年以降、その他投資の流出超が縮小しているのに対して、中東・北アフリカの流出超が顕著である。対GDP比で見ても、中東・北アフリカのその他投資の流出割合の高さが目立つ。

第Ⅰ-1-1-30図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:ラテンアメリカ・カリブ諸国

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第Ⅰ-1-1-31図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:中東

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第Ⅰ-1-1-32図 地域別にみた民間資本フロー(ネット)の推移:サブサハラ・アフリカ

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9 World Bankの「Global Economic Prospects, January 2014」は、中東欧への巨額のその他投資の流入が2008年のリーマン・ショック前の時期における住宅バブルの原因となり、また、その後、その他投資が引き揚げられたまま戻らないことが中東欧の回復の遅れをもたらしたと指摘している。



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